cometikiの9割は寺脇康文さんで、できている

私の9割は寺脇康文さんで、できている。…ので自然と思考が寺脇さんにつながっていくのでした。イラスト、日々のあれこれをまとめていきます。

舞台『クザリアーナの翼』妄想ストーリー キジー編。

この物語は、cometikiの完全な妄想です。

舞台『クザリアーナの翼』のキャラクター、および

設定が登場致しますが、

舞台『クザリアーナの翼』本編とは一切関係ありま

せんので、ご了承ください。

寺脇康文さん イラスト 妄想 2014年5月17日

鳥は自由だ。

どこへだって飛んでゆけるし、

なんだって話せる。

なのに、オレたちは…

鳥の名前を持つ、オレたちは……。

(キジー!キジーや!!起きんさいっ!!)

心がほわりとあたたかくなる声に、まだ眠い目をこする。

周囲の雰囲気からして、日の出までにはまだ時間があり

そうだ。

「あと、ちょっとだけー」

甘い声を出して、落ち葉の中へ潜り込む。

ふかふかの葉っぱは、アジトの布団よりもやわらかだ。

あと少しだけ、この幸せを感じていたいと思った。

(もうすぐ夜が明けるけん!早ぉ、起きんさいっ!!)

雷が落ちたような怒声が、頭の上で響く。

ザワザワと身体の芯が震えるほどの、葉の音が森中に

こだました。

「これはヤバイ!」と、慌てて起き上がる。

「ハイ!起きた!!起きましたっ!!」

ついでに、右手も大きく上げて振り回してみる。

本気で目を覚ましたことを、アピールするように。

すると、葉の音は落ち着きを取り戻し、夜明け前に

あった静寂に包まれた。

(頭についとる葉っぱを、よぉ落として帰るんよ)

やや呆れた声だけど、それでもオレのことを心配

していると、伝わってくる。

「ありがと。欅(けやき)のばあさま」

ジーは視線を空へ向ける。

そこには大きな欅の樹があった。

大きな大きな樹は、沢山の枝を広々と伸ばして、

揺らしている。

「早く、お帰り」と合図するように。

(ほーほー。珍しい。ちゃんと起きとるのぉ、

ジー

バサリ、と重量感のある羽音がして振り向くと、

10歳になろうかというオレの身体の、半分はある

真っ白な梟(ふくろう)が現れた。

「起きたんじゃなくて、起こされたんだよ。

梟のじいさま」

(それなら今日は、晩メシ抜きにならんでえぇのう)

そう言って、「ほーほー」と肩を揺らして笑う。

昨日はここで寝過ごして、農作業に遅れたから、

一日に一回の晩メシを抜きにされたんだ。

だからふてくされて、また来ちゃったんだけど。

(キジー!何やっとるんね!!もう太陽が昇る!!

早ぉ、アジトに帰りんさいっ!!)

「わっ!わかったってば!!じゃあ、行ってくるね!

ばあさま!じいさま!」

そう。

オレは、なぜだか鳥たちの声が聴けた。

人の言葉がわかるようになったくらいから、鳥たち

がなにか話しているのも聴こえるようになったんだ。

この森のことも、オレたちディッシュ民が暮らす

アギトプンクトにやってくる、鳥たちに教えて

もらった。

森に来ると、植物たちの声も聴けることに気付いた。

鳥たちみたいに、お喋りではないけど…あ。

欅のばあさまは、別。

オレが森に入ることを、よく思ってないから、いつも

叱るんだ。

”人間には、人間の住む場所がある”。

だから、森には来るな…そう言って、お説教される。

その間をとりもってくれるのは、梟のじいさま。

鳥や植物たちの声を聴ける、オレのことをすごく

可愛いがってくれるんだ。

そして、森のことを教えてくれたりもする。

欅のばあさまと、梟のじいさまが、この森を護り続け

ていること。

内緒だけど、食べられる木の実のこととか。

森でしか採れない、薬草のことも。

…上の階級の人間たちに知られると、厄介だから同じ

ディッシュの仲間にも言ってない。

オレがこっそり、森に通っていることは誰にも知られ

ちゃいけないんだ。

それが長年この場所を護り続けている、ばあさまと

じいさまへのせめてもの礼儀…だと思うから。

太陽が丘から顔を出す、前の道。

気配を殺して、ひた走る。

月と星の明かりを頼りに、ディッシュ民が本来暮らす

べき場所へと戻るために。

「疲れたー…」

一日中働いて、感覚の無くなった身体を、大きな欅の

幹に預ける。

そのままズルズルとしゃがみこめば、ふかふかの落ち

葉が受け止めてくれた。

最近、力仕事ができるようになってきたから、容赦な

くコキ使われるんだよなぁ。

おかげで、森へくるのもままならなくなった。

(疲れとるんなら、わざわざこんなところまで来んと、

アジトで寝ときんさい…)

「眠れないんだよ…あそこじゃ」

(ほーほー。生まれて育った場所じゃろうに?)

確かに。

ばあさま、じいさまの言う通りだ。

オレは、アギトプンクトで生まれた、ディッシュ民。

この国。

ジャメーリア最下層の人間だ。

ディッシュ民は、生まれたときから奴隷であること

が義務付けられている。

大人も子どもも、働けるものは朝から晩まで、第三種

兵国民と第二種軍国民の為に、働かされた。

「なんでオレたちだけが?」なんて思っても、絶対口

に出しちゃいけない。

すぐに、反逆罪だの侮辱罪だのと、難癖をつけられて

殺されるから。

大人も子どもも。

だから、ディッシュ民であるオレたちは、毎日、毎分、

毎秒。上の階級の人間に怯えて暮らす。

上の階級の人間の気分で、ディッシュ民の生死は決め

られるんだ。

真面目にご奉仕していても、報われることなんてない。

昨日も、突然。

同じ畑で働いていた、ヒヨって女の人が第二種軍国民

に連れて行かれた。

別に仕事をサボっていた訳でもないし、上の人間のこ

とを悪く言っていたりした訳でもない。

ただ黙々と、作業をしていただけだ。

だから「なぜ、私が?」って、悲しそうな瞳でオレた

ちのことを見てた。

ディッシュ民であるオレたちは、助けを求めること

すらできないから…静かに。

第二種軍国民は、ヒヨのことを干し草みたいに投げ

飛ばした。

地面に転がったヒヨは、そのまま引きずられて行く。

そんな扱いを受けている仲間を見ても、大人たちは動

こうとしない。

なにもなかったかのように、作業に戻る人もいる。

…なにが違うって言うんだろう。

オレたちと、第二種軍国民と。

なんでオレたちは、こんな扱いを受けて平気でいなく

ちゃいけないんだろう。

第二種軍国民に向かって一歩を踏み出したとき、後ろ

からものすごい力で引き戻された。

そして、大人たちに両手と口を塞がれたんだ。

…前にも同じことがあって、「ヤメロ!」って叫んだ

ら、周囲にいた大人たちごと、重労働を課せられた。

しかも1週間のメシ抜きで。

栄養が全くないような食事でも、1週間も抜かれると

さすがに堪えた。

とばっちりを受けた大人たちは、もっと参ったらしい。

以来、オレのまわりには常に大人がいて、上の階級の

人間がいるときには目を光らせている。

みんな、自分の身を守るために。

それに比べて、ここはどうだろう。

森の鳥たちは、木の上で本当に毎日楽しそうに話たり、

歌ったりしている。

耳を澄ませば、植物たちだって話してる…オレは、

その姿を見たり、聴いたりするのが大好きだった。

だって。

アギトプンクトでは、こんな景色は見られない。

みんな目立たないように息を殺して、生きているから。

殺されない為に、死んだように生きている。

オレたち子どもだって、はしゃいだりすることは許さ

れない。

ただ黙々と与えられた仕事をこなし、毎日をやり過

ごすだけだ。

「…オレ、生きている意味があるのかな?」

絶対口にしちゃいけない問いが、あふれた。

「デッシュ民だから…奴隷だから、言いたいことも

言っちゃいけなくて。殺されることだって、当たり前

だなんて…そんなの、オカシイよ!!」

言葉にすればするほど、情けなくなって涙が零れた。

本当に、なんのために生まれてきたんだか、わから

ない。

(ほー…では、キジーはどんな風に生きたいんじゃ?)

興味津々といった感じで、梟のじいさまが問う。

一瞬、涙が引っ込んだ。

奴隷として生きることを決められているから、自分が

どんな風に生きたいかなんて、考えたこともなかった。

「どんな…って。そりゃ!自由がいいに決まってる!」

(自由、なぁ…)

「そうだよ!ココの…ココのみんなみたいに!!」

今度は、言葉にするほど胸が熱くなって、体温が上が

った。

鼻を啜って、顔を上げる。

梟のじいさまと目が合うと、真ん丸な瞳が細められた。

(そうか。じゃがのぉ、ここの者にも守らねばならん

規律はある。お前の言う自由とは、少し違うかもしれ

んぞ?)

「でも、いつだって楽しそうじゃ…」

(梟の!もうやめんさい。その子は何もわかっとらん

のじゃけぇ)

オレの言葉を遮って、欅のばあさまが枝を揺らす。

これ以上の話は無駄だというように。

梟のじいさまは、肩を竦めて言った。

(欅の。知っとる者が、知らん者に教えることは、悪い

ことじゃなかろう?)

(それはただの、お節介じゃ)

(ワシの個性と、言うて欲しいのぉ。ほーほー)

欅のばあさまは、溜息を吐くと黙ってしまった。

…怒ってるらしい。

オレは、ばあさまの足元で、じいさまの顔を交互に見て

様子を伺う。

すると、じいさまが目の前に降り立った。

(キジー。お前は、ワシらの声が聴こえるか?)

「ああ。聴こえるよ?なんだよ、今更」

(ならばその耳で、よーく聴いてみるんじゃ。音に

惑わされずに、その声を)

「…声?」

梟のじいさまの声につられて、少し離れたところで

歌っている、鳥の一団に耳を合わせた。

コロコロと楽しそうなメロディが聴こえる。

  父さん喰われた、チュンチュクチュン

  母さん喰われた、ピーヒョロピー

  黒くて大きい竜巻が、あっと言う間に飲み込んだ

  けれど僕らは、忘れない

  父さん、母さん、ありがとう

  私ら、いつでも思い出す

  父さん、母さん、大好きよ

「え?なに…?」

弾んだ曲からは、想像できないような歌詞が聴こえて、

オレは自分の耳を疑った。

ビックリするオレに、梟のじいさまが一歩近づく。

(あの子らは、この前起きた竜巻で、家族を亡くした

んじゃ。あっちの者は、最近子どもを亡くしてのぉ)

 キュロキュロ、あの子の温もりは

 ケキョケキョ、今でも忘れない

 キュロケキョ、愛しい愛しい子

 生まれてくれて、ありがとう

(楽しそうに、聴こえておったじゃろう?)

「…歌ってたから……みんな」

オレは、ガックリと項垂れた。

鳥や植物の声が聴こえるなんて…思っていただけだ。

ホントの声は、何も聴いてなかったんだ、と。

(今日を生きることを喜ぶ者も、誰かの死を悲しむ

者もおるんじゃよ。だがなぁ、キジー。誰一人として

泣く者はおらんのじゃ)

「どうして?」

(生ある者は、必ず死ぬと知っておるからのぉ。ワシ

らは人間よりも、それをちょっとばかり素直に受け

入れておるからじゃ)

「あ…」

”必ず死ぬ”。

ディッシュ民だからとか、上とか下とか、人間だから

とか、鳥だからとか植物だからとか…そういうこと

じゃないんだ…。

死ぬまでの間、どう生きるかってことなんだ。

それが、ここのみんなは上手なんだなぁ。

愚痴って文句言ってばっかりだった自分を恥じて、

おずおずと梟のじいさまを見る。

梟のじいさまは、少しだけ肩を揺らした。

(キジー。お前には、お前の生きる場所がある。

そして、生き方がある。たまの寄り道ならえぇがな。

本当の道から外れちゃいけんよ)

ふんわりと、欅のばあさまの声がする。

抱きしめるように、やわらかく。

「ばあさま、じいさま…オレ。どうやったら、みんな

みたいに強くなれるかな…」

オレは、欅のばあさまを見上げた。

(ほー。仲間を作ることかのぉ)

足元で梟のじいさまが、目を細める。

愉快そうに。

「仲間?そんなの、できっこないよ!!だって、

ディッシュ民はみんな、自分のことで精一杯で…」

(そうかねぇ?お前のように思う者も、おるかも

しれんよ?)

「?!」

ああ…。

欅のばあさまの、言う通りだ。

オレは、また勝手に決めつけてたのか。

音楽に惑わされて、その声が聴けなかったみたいに。

ディッシュ民はみんな、死なない為に自分を守る

ことだけに必死なんだと…決めつけてたんだ。

(それなら…きっかけが必要か。キジー、お前歌は

歌えるか?)

梟のじいさまの、唐突な質問にオレは言葉に詰まる。

「うっ…歌なんてっ!歌ったことないよっ!!」

(歌ってみぃ?)

「歌えないってば!そもそも、どーやって歌えば

いいかとか、わかんないしっ!!」

(ほー…そうか)

バサリと大きく羽ばたくと、梟のじいさまは欅の

ばあさまの肩へ止まった。

そして、森中に響くように叫んだ。

(おーい!みんな!!キジーに歌を教えてやって

くれんかの?)

すると…森が動いたみたいに、いろんな種類の鳥

たちが一斉に、オレの周りに集まってきた。

(ピョピョピョ、なになに?キジーが歌うの?)

(チュンチュク、いつか歌いたいって言うと思って

たよー!!)

(ケンケン、一緒に歌おう!キジー!!)

楽しそうに飛び回り、歌うことを勧めてくれる。

みんなの仲間にはなれないってわかったけど、この

瞬間だけは、仲間になれた気がした。

「腹が減ったよ、グーグーグー♪

 元気いっぱい働けば♪

 もっと、ご飯を食べたいよー♪」

仕事が終わって、アギトプンクトが眠りにつくと、

オレは森へやってきた。

そこで鳥たちに、歌を教えてもらうようになって

から、自分でも歌をつくるようになった。

(ケキョケキョ、あはは!キジーの歌は面白いね!)

(キュロキュロ、お腹が減ったのよくわかる!!)

「そーかな?」

(ピョピョピョ、腹ペコキジーだね!)

(チュンチュク、すごく上手になったよ!!)

「まだ、音外したりもするけどなー。みんなのおかげ

だよ!ありがとう!!」

森のみんなは優しくて、いつもオレが作った歌に感想

をくれる。

それから、こうするといいよ?という、アドバイス

くれたりするんだ。

今までは、みんなの歌を聴くばかりだったから、こう

して話をするのが、すごく楽しかった。

(キジー。そろそろ夜明じゃけぇ、自分のアジトへ

帰りんさい。少しは寝んと、疲れがとれんよ?)

欅のばあさまの声を合図に、まわりにいた鳥たちが

パッと散っていく。

オレは歌うことが楽しくて、最近森へ来たら寝る間も

惜しんで、歌を歌っている。

それを、欅のばあさまは心配しているみたいだ。

でも、歌うことで元気が出るから、多少の寝不足なん

て気にならないんだけどな。

…ここで駄々をこねると、叱られることがわかって

いるので、渋々うなづく。

「じゃあ、今日はもう帰るけど。また今夜も、来て

いいだろう?」

(もう、森へは来るな。キジー

その答えは、意外なところから降ってきた。

「は?梟のじいさま…なに冗談…」

(それだけ歌えれば、いずれ人の仲間もできよう。

じゃが、いつまでもここへ通ってくれば、その日は

遠くなる)

「べ…別にいいよ!もしも、その日が来なくても。

オレは…」

(甘えるな!強くなりたいと言うたのは、お前自身

じゃろう!!)

「!?」

(二度と森へは来るな!いいな?!)

「な…なんでだよ?オレ、なんかした?そりゃ…

強くなりたいって言ったし、歌も教えてもらった

けどさ…二度と来るな、なんて…」

(キジー、何度も言わせるな。森へは来るな、

二度とじゃ!!)

「なんなんだよ?!どーしちゃったんだよ?ねぇっ!

欅のばあさま!!梟のじいさまに、なんとかゆって

よ…ねえっ!!」

(…)

「ばあさまったらっ!!」

森から音が消えた。

今までのことが、夢だったみたいに。

オレ一人、置いていかれたみたいに。

誰の気配も感じない。

真っ暗な中で、ひとりぽっち。

オレは急に悲しくなって、その場を駆け出した。

悲しくて、悲しくて涙が止まらなかったけど、

泣き声は出さなかった。

歯を食いしばって、ひたすら駆けた。

(欅の…行ったぞ?)

(ああ…。すまんねぇ。最後に嫌われ役を、任せて

しもぅて…)

(いやいや。聡い子じゃから、わかってくれるじゃ

ろう。それよりお主、大丈夫か?)

(今回はちょっと、しんどそうじゃねぇ。最近、雨

も少なくなっとったし。今の内に、頼むよ。梟の)

(ほー。動かせる者は動かして、戻ってくるよ)

畑仕事の手を止めたのは、大人たちの慌てた声の

所為だ。

「おい!なんだ?あれ?」

「煙?」

「火…じゃないのか?」

「あそこ、森…だろ?森が、燃えてるのか?」

天地がひっくり返ったみたいな、大声に顔を上げ

れば、緑の中に橙色の火が揺れている。

そして、黒や灰色の煙は、森の場所を隠そうとして

いた。

森が、燃えている。

嫌なにおいがした。

オレは、森へ向かおうと駆け出す。

だがその足は、すぐに周囲の大人たちに止められた。

「今は、労働時間中だぞ!キジー!!」

「そうだけど!森が…森が、燃えてるんだ!!」

「だからって、お前が行ってどうなる?」

「どう…って…どうにもなんないけど!オレ、あそ

こに行かなきゃいけないんだよっ!!」

「なに訳のわかんないこと言ってんだ?」

「森が燃えたのを口実にサボられでもしたら、また

俺達まで強制労働だぞ」

「そんなの、オレ一人でやるから!!放してよ!

放せってばーーーっ!!」

「おい!このままじゃ、今日の作業が終わらんぞ?」

「よし、あそこの木に括り付けとこう!!」

「嫌だ!放せったらー!!」

子どもの力が、大人の男2人の力に敵うハズもなく

て…オレは、一日中畑の隣の木に縛られていた。

その間も、森は絶えることなく燃えて…。

オレは、ただそれを見つめることしかできなかった。

その日の夜。

強い雨が降って、森の火は消えたようだったけど、

森から煙が消えるまで、かなりの日にちがかかった。

オレは森の入り口で、目を閉じ耳を澄ます。

願いを込めて、必死に。

「……何も、聴こえなくなっちゃったな。ホントに、

もう…みんなの声、聴けないのかよ…」

 死んじまったのかよーオイオイオイ♪

 死んじゃないよなーヘイヘイヘイ♪

 嘘でもいいからさー♪

 声聴かせてくれよ、なぁー♪

涙を堪えて、歌にする。

歌なら、届くかな…なんて、思って。

「なぁ?」

すぐ後ろで声がして、驚いて振り返る。

そこには、オレと同い年くらいのディッシュ民がいた。

様子を伺うように、ゆっくりと言葉を続ける。

「…なあ。楽しそうだな、お前」

歌に興味を持った少年は、瞳を輝かせてみせた。

そこに悪意なんて全くないのに、オレはムカついて

しまったんだ。

少年から顔を背けると、吐き捨てた。

「別にっ!楽しい訳、ねぇだろ!!」

  楽しそうに聴こえておったじゃろう?

  だがなぁ、キジー

  誰一人として、泣く者はおらんのじゃ。

  生ある者は、必ず死ぬと知っておるからのぉ。

「…知って、たのか?…だから…?」

もう聴こえなくなった、梟のじいさまの声が甦る。

いつもオレのこと、迎え入れてくれていた、じいさま

がなんであの日に限って「もう来るな!」と言った

のか。

いつも厳しいばあさまが、どうしてあんなに優しか

ったのかとか…今、理由がわかった。

オレのこと、守るためだ。

「オイ!お前…大丈夫か?楽しそうだったり、急に

泣いたり…忙しいヤツだなぁ??」

少年が慌てて、声をかけてくる。

その心配っぷりは、どこか欅のばあさまみたいだ。

「泣いてねぇよ!これは、歌ってんだ!!」

「うた?」

「そうだよ!!気になるなら、教えてやる」

「ホントか?」

  それだけ歌えれば、いずれ人の仲間もできよう

記憶の中の梟のじいさまが、オレの背中を押す。

ねぇ、みんな。

まだ全然下手くそだけどさ。

これからココで作っていくよ。

みんなみたいな、歌と仲間を。

「ああ。オレはキジー!お前、名前は?」

「オレは、ウグイ!」

「じゃあ、ウグイ。最初はな…」

そしたらいつか、飛べる日だって来るかな。

鳥の名前を持った、オレたちだから。


前回、クエーサー大帝の妄想を書いたときに、

読んでくださったかたが「キジーのお話も読んで

みたいです」と、仰ってくださったので、書いて

みました。

 ■クエーサー大帝の妄想話はコチラ

 2014/04/05 : 舞台『クザリアーナの翼』妄想ストーリー

ジー

子ども時代のお話です。

私の中で、大人のキジーは『クザリアーナの翼』

の舞台の中で、完結してしまっているので、

こういう変化球になってしまって、ごめんなさい。

でも、

歌をうたっているときのキジーが、劇中でも

とっても楽しそうだったから、そこからヒント

をいただいて書きました。

ちょっとでも楽しんでいただけたら、幸いです。

期待ハズレでしたら、申し訳ございません。

笑って過ごしてやってください。