cometikiの9割は寺脇康文さんで、できている

私の9割は寺脇康文さんで、できている。…ので自然と思考が寺脇さんにつながっていくのでした。イラスト、日々のあれこれをまとめていきます。

ドラマ『相棒』二次創作小説「石に花咲く」を書きました

花

 

ドラマ『相棒』のお誕生日が6月3日だったとは!

ドラマ『相棒』が6月3日に、15回目のお誕生日を迎えられたとのことを、webニュースで知りました。

本当に、おめでとうございます!!

 

 

寺脇康文さんが卒業してしまってからは、すっかり見る機会が減ってしまいましたが、私の脳内では今も右京さんと薫ちゃんのコンビで、妄想が広がっています。

 

右京さんの相棒がどなたに替わっても、この妄想が止まることはありません。

 

そんな中、夢を見ました。

寺脇さんが、薫ちゃんではない別人として『相棒』の世界に登場する…というものです。

設定だけは覚えていたので、短い物語にしてみました。

 

 

ドラマ『相棒』二次創作小説 石に花咲く

この小説は、ドラマ『相棒』のキャラクターを使用して書いておりますが、本編とは全く関係ありません。

cometikiが『相棒』を基に考えた、二次創作の短編小説です。あらかじめご了承ください。

 

(c)テレビ朝日東映

 

 


 

 

「助けてください!」と、あともう1つだけ許された言葉に、アイマスクの向こう側の男が応えた。

 

「か…やま…くん…」

 

微かに震えたその声を聞いて、俺はなんだか胸が締め付けられた。

 

 

〇  〇  〇  〇  〇

 

 

「気をつけて、行くんだぞ」

 

「お父さんこそ、気をつけてよね!」

 

自宅の扉に鍵をかけながら、横に立つ娘の楓(かえで)に声を掛けると、それはこちらの台詞だと言わんばかりに見上げられた。

俺を心配する表情は、5年前に亡くした妻によく似ている。

 

「受験生なのに、余計な心配かけて悪いな」

 

子どもをあやすように頭を撫でると、勢いよく振り払われてしまう。

 

「私はね、お父さんの足手まといになりたくないの!もう充分に面倒見てもらったんだから、これからはちゃんと自分の仕事してよね!」

 

まるで出来の悪い生徒に向かって、優しく説教する教師のように言うと、楓は息を吐いた。

一気に大人らしくなった娘の姿に、苦笑いする。

 

「なんだよ。仕事なら今までだって、ちゃんとしてたろ?」

 

「そーじゃなくて!本当にやりたいことをやってねってこと!」

 

強い口調で言い切ると、楓は「いってきます!」と駆けだした。

その背に「いってらっしゃい」と呟いて、自分も歩き出す。

 

5年前まで刑事として働いていたが、妻が亡くなり幼い娘の傍に居ることを選んだ俺は、事務方への異動を願い出た。

勤務時間や休日の予定が立てやすい分、楓と一緒の時間を作ることができた。

 

「このまま事務方でいいかな」と考えていた俺だったが、先週から刑事課へ異動になった。

 

春の人事異動で刑事課にやってきた田丸課長は、昔の俺の上司だった。

妻を亡くしたときも、親身になって話を聞いてくれた人で、事務方への異動を勧めてくれたのも、田丸課長だ。

 

その人が「そろそろ戻ってきたらどうだ?」と、声を掛けてくれた。

俺はブランクがあるし、無理だと断ろうとした…しかし「お前の力を貸して欲しい」…そう言ってくれたのだ。

 

自分にどれ程の力があるかはわからないが、田丸課長の想いに応えたいと思った。

 

 

〇  〇  〇  〇  〇

 

 

「神山、菊池と一緒に聞き込み行ってくれ!」

 

「ハイ!」

 

現場に戻れば頭で考えるよりも、身体が覚えていることが多くて驚いた。

思っていた以上に、動ける自分―…。

だから、油断していたのだ。

 

 

〇  〇  〇  〇  〇

 

 

「神山さん…中々、証言とれませんねー…」

 

1日歩き回ったが、目ぼしい収穫がなくて、菊池が情けない声を出す。

刑事になってまだ数年の菊池は、年齢が楓に近いので、俺は息子のように思ってしまう。

 

「今日は、よく歩いたからなぁ。疲れたか?」

 

「あ!スミマセン…弱音吐いちゃって…」

 

途端に恐縮する菊池の頭を、ポンと撫でてやる。

 

「気にするな、そんな日もあるさ」

 

ふと目をやると、菊池の向こうに自動販売機が見えた。

俺がなにか飲み物を買ってきてやろうと、口を開くと菊池の携帯が鳴った。

菊池の受け答えを聞いていると、どうやら田丸課長かららしい。

 

俺は自動販売機を指さし、「すぐに戻る」と合図して駆け出した。

 

スーツの内ポケットから財布を取り出し、手にした小銭を投入しようとした瞬間、後頭部に強い衝撃を受け、俺は視界を失った。

 

 

〇  〇  〇  〇  〇

 

 

頭の痛みで意識を取り戻したが、目を開けても何も見えない。

身体を動かそうとしても、後ろ手に縛られている所為で、上手く動けなかった。

冷たさを尻に感じて、自分が床に座らされていることに気づく。

 

「ようやくお目覚めか、神山嘉永(かみやまかえい)さん」

 

地の底から響くような、しゃがれた男の声を間近に聞いて、俺は背筋が震えた。

殴られたときもだが、この男の気配を感じ取ることができなかったのだ。

 

「誰だ?俺に一体、なんの…」

 

「ああ。アンタに用は無いんだ。ただ、ちょっと協力して欲しくってな」

 

「は?」

 

拉致しておきながら、俺に用がないとは…どういうことなのか?

全く、状況が飲みこめない。

 

「俺さぁ、ムショに居たんだよ。クソ刑事共の所為でさ!1日でも早く出所して、復讐してやろうと思ってたのに…1人デカ辞めちまっててよぉ。日本にすら居ねーっていうし…ムカついて街歩いてたら、アンタを見つけたんだよ!辞めた刑事と、瓜二つのアンタを!!」

 

興奮してきたのか、声を荒げる男とは逆に、俺の頭の中は冴えてゆく。

復讐のために出所してきたなんて、どうかしている。

 

「悪いことは言わない。復讐なんて、今からでもやめたらどうだ?」

 

言い終わらない内に、男に左頬を思いきり殴られた。

俺は反動で床に倒れ込み、舞い上がった埃を吸い込んで、激しく咽てしまう。

 

「もう始まってんだよ!今更、やめられないね!!」

 

男は吐き捨てると、「ひゅっ」と息を詰めた。

遠くから、カツン、カツンと足音がゆっくりと近づいて来たのだ。

俺の髪を掴んで引き起こすと、男は耳元に口を寄せて小さく言った。

 

「今からお前は、この2つ以外口にするな。"助けてください"と"右京さん"だ。いいな?」

 

「う…きょう…って、誰だ?」

 

尋ねると今度は、腹を蹴り上げられた。

痛みにのたうつ俺に構わず、男は話を続ける。

 

「いう事を聞いてりゃ、アンタは娘のところに帰してやる。だが、いう事を聞かねーってんなら、ここで死んでもらう。いいな?!」

 

俺の額に、冷たく堅い塊が押し当てられた…これは、拳銃だ。

嫌な汗が、体内から噴き出す。

 

「ここでしたか」

 

カツンと足音を止めた主は、凛とした声で言った。

 

「久しぶりだなぁ。覚えてるか?俺のこと」

 

男は声の主に向かって、苦々しげに吐き捨てる。

 

「1ケ月前に出所したハズですが、もう戻りたいようですね?」

 

「ああ!アンタとコイツを殺したら、すぐに戻ってやるよ!!」

 

男に腕を掴まれて、前に突き出される。

俺は後ろ手に、土下座する格好になった。

髪を掴んで顔を上げさせると、男は俺の背中に拳銃を突きつけた。

俺の頭に、楓の笑顔が浮かぶ。

 

「助けてください!右京さん!!」

 

「か…やま…くん…」

 

なりふり構わず叫んだ俺に、アイマスクの向こうの…右京さんという人物は、声を震わせた。

俺の姿や声が、男の言う"辞めた刑事"に似ているということを、証明するように…。

いたたまれなくなって、俺は顔を伏せた。

 

「デカ辞めたコイツを、探し出して連れて来るのに、苦労したぜ!」

 

してやったりといった調子で、男が愉快そうに笑う。

 

「ふっ」と、右京さんが息を吐く。

男の態度から、何かを察したようだった。

 

「全く、ご苦労なことですね。復讐のために、無関係な人間まで巻き込んで」

 

右京さんは、凍りつきそうな声で言い捨てた。

場の空気が、一変する。

拳銃を持っている男のほうが、有利であることに変わりはないハズなのに、右京さんの言葉に、男がうろたえたのがわかった。

 

男は慌てて俺を立たせると、自分の盾にした。

そして勢いよく、俺からアイマスクを外す。

 

「見ろ!亀山だ!!」

 

開けた視界の中で、右京さんが見えた。

オールバックに眼鏡…仕立ての良いダークな色のスーツと靴を着こなし、知的な雰囲気を漂わせた男性だった。

しかし俺と目が合った瞬間、彼の表情から色が消えた。

 

「右京…さん?」

 

「そう!その顔だよ!いつもスカした顔してるクセに、コイツが絡むと途端に崩れるんだよなぁ!いい気味だ!!」

 

狂喜を含んだ声で言い放つと、男は右京さんに拳銃を向けた。

 

…瞬間!俺は背後に立つ、男の足の甲を思い切り踏みつけた。

急所を突かれ、男が痛みに悶える。

その隙を突いて、右京さんが男に飛びかかる。

見事な動きで、あっという間に男は組み敷かれた。

 

「神山さん!!大丈夫ですか?!」

 

そこへ、菊池や所轄の仲間がやってくる。

突然居なくなった俺を、捜してくれていたのだ。

 

手を解かれたとき、ようやく自分が元のスーツではない、Tシャツにジャンパー、カーゴパンツに着替えさせられていたことに気づいた。

心配して声を掛けてくる仲間の向こうで、悲しそうに俺を見つめる右京さんが居た。

 

 

〇  〇  〇  〇  〇

 

 

3日後―…俺は、官房長官室に呼び出されていた。

理由は全くわからない。

ただ、田丸課長に急いで行くよう命じられただけだ。

 

部屋に入ると、俺の姿に引き寄せられるように、小野田官房長が近づいてきた。

そして無言のまま、スーツ姿の俺を上から下、下から上へと何度も見返す。

 

「世の中には似た人間が、3人は居るっていうけど…ここまでとはねぇ」

 

1人納得してソファーに腰を下ろすと、小野田官房長は「クスリ」と笑った。

 

「あの…今日はどういったご用件でしょうか?」

 

意味もなく笑われてムッとする俺に、小野田官房長が「そうでした」と、手を打った。

 

「異動です」

 

「は?」

 

「明日からキミ、警視庁の刑事。おめでとう」

 

目だけ細められ、事務的に発せられた言葉に、俺は困惑する。

 

「そ…それは、どういう…」

 

「神山クン、危ない目に遭ったんだって?」

 

「はい……」

 

3日前のことを思い出し、思わず身体に力が入った…喉が詰まる。

小野田官房長は、そんな俺の変化などどうでもいいように、言葉を続けた。

 

「また、同じことが起こらないように…ですって!」

 

異動の命令を出しながら、どこか他人事のような官房長の言い方が気になった。

官房長の表情から、意図を読み解こうと俺は「じっ」と見つめる。

その視線に気づいた官房長が、苦笑する。

 

「傍に置いておきたいって、言ってきたのよ。杉下がね」

 

「杉下?」

 

杉下右京!警視庁イチ頭がキレて、無駄に正義感の強い男!」

 

…杉下…右京…右京さん。

フルネームを聞いて、ようやくあのときの"右京さん"だとわかった。

 

「まぁ…アイツに貸を作っておいて、損はないですからね。アナタには犠牲になってもらいます」

 

「ぎ、犠牲?…ですか?」

 

「人材の墓場と、呼ばれている男ですから…覚悟して。でもまぁ…神山クン次第かもしれないけど」

 

「え?」

 

 

"アナタ、杉下の相棒だった男…亀山薫にそっくりだから―…"

 

 

こうして俺は、よくわからない理由で突然、警視庁へ異動になった。

とはいえ、どこに行っても刑事は、刑事。

やることは同じだ…と、まだこのときは思っていた―…。

 

 

「本日付で特命係に異動になりました、神山嘉永です。よろしくお願いします」

 

 

― END ―

 

 


 

 

オマケに、神山嘉永さんを妄想してみる…。

妄想寺脇さん 2015年6月8日

妄想寺脇さん 2015年6月8日