ドラマで寺わんこが見られぬものか、と妄想してみる。
先日の『こんな役の寺脇康文さんが見たい、という妄想。』以来、妄想に拍車がかかり、現在は「ドラマで寺わんこが見られぬものか」と考え中です。
ラジオ『桑田佳祐のやさしい夜遊び』の代行DJで、久しぶりに薫ちゃんの声を聴いたからでしょうか…陽の気に溢れた、寺脇さんが見たくなってます!!
地球ゴージャスの舞台では、わんこ系の寺脇さんが観られるのですが、映像のほうでも見れる機会があるといいのになぁ…と。
そして、わんこ系を極めるなら、地球ゴージャスの舞台『HUMANITY(ヒューマニティ)』のように、耳もシッポもガッツリ装備された"寺わんこ"をっ!!是非っ!!
>舞台『HUMANITY』観劇後の感想はコチラ
2006/05/26 : 舞台『HUMANITY』観劇記録 in TOKIO
2006/06/24 : 地球ゴージャス公演vol.8 舞台『HUMANITY』観劇記録 in OSAKA
2006/06/06 : 地球ゴージャス公演vol.8 舞台『HUMANITY』が好きっ!
とはいえ…『HUMANITY』の中でも、寺わんこ化されるのは"夢の世界"での出来事。
現実世界で寺わんこ化されるのは、やはり難しいのかな?
ファンタジー設定なら寺わんこ化してもいいんじゃないかと!
ファンタジーっぽくすれば、現代でも寺わんこが見られるんじゃないかな。
ただの犬ではなくて…人間を厄災などから護るための…神獣。
ずっと昔から生きていて、陰ながら人々を護り続けている。
現代でどのように生きているか、設定が定まりませんが…過去の物語なら少し、思いつきました。
妄想物語、書いてみます。
大きな大きな山の、森深く。
息をひそめて、俺は生きている。
本当は村で生活したいけど…俺は見た目が違うから、ダメなんだ。
茶色い毛とか、獣の形の耳や尻尾。
普通の人にはないものを持ってるから、「化物」と恐れられて近づけない。
目を合わせたら、喰われるだとか言われて…。
人間を食べたいだなんて、一度も思ったことないのに。
懸命に生きている人間たちは、キラキラしていてとても綺麗だ。
俺はその姿を見るのが、とても好きで。
困っていたら、力になりたいとも思うんだけど…。
「もし!少々尋ねるが、ここの主はどちらかな?」
樹の上で悶々と考え事をしていた俺の耳に、人間の声が飛び込んできた。
少し歳を重ねた、男の声だ。
俺は勘付かれないよう、用心深く気配を消して、葉の間から男を覗き見る。
「少し話がしたいのだが、姿を見せてはもらえぬだろうか?」
白い装束に、錫杖を持つ男は、穏やかな落ち着いた声で語り続けた。
ただの人間ではない…その空気感が、俺の中の警戒心を上昇させる。
「殺されるかもしれない」と、思った。
男が「ふっ」と、息を吐く。
「ワシは験者だが、お主を倒しに来た訳ではない。村人に話を聞いて、興味を持ったのだ」
この場所は村から最低でも、丸一日はかかる場所。
だから、今まで一度だって人間は入ってきたことがない。
興味を持ったってだけで、わざわざやって来るだろうか?
近づかないほうがいい…そう判断したとき、鼻先を甘美な香りが走った。
「土産も、持ってきたんだ。鳥肉が好きらしいというのでな、無理を言って1羽わけてもらった」
バサリと樹の根本に置かれた鶏は、森に住む野鳥よりも美味しそうで、自然と俺の喉が鳴る。
食べたことはないけれど、本能が"美味い"と告げていた。
今すぐに飛び出して、かぶりつきたいけれど…男の目的はなんなんだろう。
冷静な部分が、警告を発する。
「化物」と呼ばれている俺と、話したい?
でも、こんな森の奥まで、1人で来てくれた。
でも、俺の姿を見たら殺さなきゃ…って思われるかも…。
でも、お土産まで持ってきてくれたんだし…。
でも、でも、でも…。
頭の中で考えている内に、辺りは真っ暗になっていた。
男の気配も、消えたようだ。
俺は少しガッカリしながら、樹から降りた。
鶏肉に手を伸ばした瞬間―…
「なんだ、そこにおったのか」
「?!」
すぐ後ろで男の声がして、身構える。
見ると、男は樹の根元にある岩に腰かけて微笑んでいた。
気配は消えたと思ったのに、なんで居るんだろう?!
「お主と同じで、ワシにも気配を消すことくらいできるよ」
ジリジリと後ずさる俺に向かって、男が「ぷっ」と吹き出した。
「ワシはそんなに、お主をとって喰いそうに見えるかい?」
「あ…」
その言葉に、村人から「化物」と呼ばれて怖がられていた、自分の姿が重なる。
見かけだけで判断されて…いつも辛くて、悲しかった。
「いや…その…。俺、こんなだから…」
「ふむ。人ではないようじゃが、妖の類でもあるまい?」
暗くても、獣の形の耳や尻尾は見えているハズなのに、男は一向に怖がらない。
逆に俺を怖がらせないよう、男は指一本すら動かさずに話の先を促す。
その気持ちが嬉しくて、俺は自分のことやこれまでのことを、一生懸命に話した。
この地に住む人たちが困ってたら助けたいこと、けれどこの外見の所為で近づくことすらできないでいること。
人間を食べたいと思ったことは一度もないし、「化物」と呼ばれているけれど、できるなら人と関わっていきたいことなど。
俺は話の途中で、樹の根元に座り込んでしまったけど、男は微動だにせずただ相槌を打って、聞いてくれた。
「ははっ!それで夜に、村へ行くようになったのか」
「だって、はっきり姿が見えなきゃ平気だと思って…」
「じゃが、お主の目は暗闇の中で光ってしまうからのぉ。逆に村人たちは、怖かったかもしれんなぁ」
「そんなぁ…俺、怖がらせるつもりなんて…」
「ああ。お主は、よくやっているよ」
男の労いに、胸がほわりと温かくなって、俺は思わず俯いた。
「俺…これから、どうしたらいいかな?」
「人と、関わってゆきたいか?」
「うん」
「よし!ならワシが、少し力を貸してやろう」
「ホント?!」
嬉しくて、尻尾が自然と左右に揺れる。
男は「もう立ち上がっても、大丈夫かな?」と断ってから、樹の根元に置いたままだった鶏肉を手に取った。
「お主の好きなもの…そうじゃのぉ、この鳥肉を絶つことで、仮の人の姿を与えるというのはどうじゃ?」
「鳥肉を…絶つ?」
「もしも食べたら、今の姿に戻ってしまうがの」
「食べなきゃ人の姿のまま…ってこと?」
好物を絶って、願いを叶える…っていうのは、人がやってるのを見たことがあるから、すんなり納得できた。
男は鳥肉じゃなくてもいい…と言ってくれたけど、大きなお願い事を叶えてもらうなら、大好物にするのが礼儀だと思う。
俺の返事を聞くと、男はなにやら呪文を唱え始めた。
次第に、耳と尻尾がムズムズしてくる。
自分の太ももを抓って、その違和感に耐えていると、森の中に朝陽が差し込んできた。
「ああ…綺麗な黄色をしておったのか」
「え?」
「勿体ないが、人の目には自分と同じ髪色に見えるようにしておからの」
「え?えっ??」
男の言葉に立ち上がって、耳と尻尾を触ってみるが、そこには何も無かった。
代わりに、人と同じ形の耳ができている。
「おおーっ」と、感動している俺に、男が笑いかける。
「その姿の間は、獣の姿ときの力は抑えられるが…人として生きてゆく分には、必要はなかろう」
「あ…ありがとうっ!!」
「後は…しばらくワシと一緒に、村の中で人の生活に慣れる練習じゃな」
「そ…そんなことまで?!」
「最初は、不自由なことが多いじゃろうからな。そのくらい、付き合うよ」
「ありがとう!本当に本当に、ありがとうっ!!」
それから山を下りて、男と一緒に村での生活が始まった。
男は、名前の無かった俺に"雄黄(ゆうおう)"という名前もくれた。
人の生活も丁寧に教えてくれてが、俺はうっかり鶏肉を口にすることがあって、その度に獣の姿に戻って慌てた。
男は「絶つというのは、無理かもしれん。だから、お主の一番嫌いなものを食べることで、人の姿に戻れるようにしよう」と、術に手を加えてくれたりもした。
そんな日々が、1年とちょっと続いた。
ずっと俺からのお礼を断っていた男だったが、村を出発する朝に「どうかずっと、人間を嫌わずにいてくれんか?」と願った。
あれからもう随分経つ…でも今日も変わらず、俺は人間が大好きだ。
― 終幕 ―